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令和 あくび指南

2024年11月22日gallery,ようこそ

2024年 8月20日 迷い

五大虚空蔵菩薩像のうち蓮華虚空蔵

私が今迷っているのは、京都 神護寺の旅という日曜美術館の録画を消せないでいることだ。呑気な話のようだがこの番組を見直すたびに新しい発見があり東京国立博物館の展覧会も、きっと見ごたえのある展覧会だろうと想像している。というのも私はTVの面白さと実際に実物と対峙した時の感動は全くの別物だと思っているからだ。今でも昔この博物館で見た長谷川等伯の松林図屏風の事を思い出すことがある。その時はまるで屏風から光が放たれているような気がして絵画鑑賞の思い出でというよりは不思議体験の記憶として蘇ってくる。

ところで今回番組のテーマとなる神護寺は弘法大師と深い所縁のあるお寺で、このお寺には9つの国宝と2千8百点を超える重要文化財が所蔵されている。この展覧会では、重さ900kgの梵鐘以外すべての国宝が展示されているそうだ。その中には歴史の教科書でも有名な源頼朝の肖像画があって、実際の絵の前でドラマの頼朝を思い浮かべると、あの聡明さと冷徹さが伝わってくるように想像してしまう。とはいえ今回の展示は2021年に同館で開催された最澄と天台宗の展示から3年に渡る大企画と言っていいだろう。つまりこの展示は日本仏教の歴史を国宝によってリアルに辿ることが出来る展覧会と言っていい。というのも鎌倉時代に誕生した浄土宗や浄土真宗、禅宗の曹洞宗、日蓮宗なども皆、最澄によって開かれた天台宗比叡山延暦寺で学ばれている。そして今回の展覧会ではその最澄が学んだ弘法大師にスポットを当てた展覧会なのだ。この最澄が密教を学んだのが、まさにこの神護寺で、このことを示す灌頂歴名には最澄の名前が筆頭で記されている。ところで弘法大師といえば弘法も筆の誤りと例えられる方だが、この書にはいたるところに訂正があり、弘法大師にとって筆の誤りはそもそもあまり気にならないことのようだ。

さてこの展示の圧巻となるのが縦横5m越えの両界曼荼羅だろう。この曼荼羅は金採で描かれた曼荼羅だが、胎蔵界と金剛界の対になっている。ただし展示は、これを交互に入れ替えて行われるそうだ、この曼荼羅で特に私が面白く感じたのはここに描かれている不動明王の姿が、これ以降日本で描かれる不動明王の基本モデルに成っているそうだ。

ところで、この番組を視て私が最も見てみたいと思っているのが五大虚空蔵菩薩坐像だ。この仏像は平安時代の作らしいのだが、その姿は一見象徴的に表現されているようで、よく見ると厳しいリアリズムを感じさせる。まさに表現の極致のようで、きっと肉眼で見るこの仏像はより艶めかしさを感じさせながらも、鑑賞者を理想の曼荼羅世界に誘ってくれるに違いない。

それにしても、これだけの宝物や壮麗な神護寺の佇まいを目にすると、創建時からここに込められた思いの大きさに感銘を受ける。つまりここには天皇を初め、権力を司る人々の切なる思いが伝わってくるからだ。それは単なる豪華さや奇を衒って集められた見せかけのものではない。それは繊細でしかも現代の我々にとっても動かしがたい真実を感じさせるものだからだ。つまりこれらの仏像を通して時の権力者が願ったのは、国の平和や民の繁栄ではなかっただろうか、その思いの気高さをこの番組は現代日本に暮らす我々に伝えている。

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Posted by makotoazuma