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令和 あくび指南

2024年11月22日gallery,ようこそ

2024年 9月30日 響きの探究

先日村治奏一氏のコンサートに行ってきた。村治奏一と言えば村治佳織氏の弟さんで以前テレビで天才ギタリストの天才弟のように紹介されていた。私のイメージでは半ズボンの男の子のようなイメージだったが、この日会場に現れたのは世界を股に掛けるシュッとしたイケメンアーティストだった。さて氏は2019年からクラシックギタージャーニーというコンサート活動を行ってきたが、今回「TONE+北海道」は初めての北海道上陸コンサートになるそうだ。

今回北海道上陸の皮きりとして函館が選ばれたことは、函館市民にとって大変光栄なことだと思うが、同時に氏にとっても幸運な出来事だったのではなかったかと想像している。というのも私は以前からこのホールの音響の良さにはとても良い印象を受けていたからだ。しかもその魅力は音の響きばかりではなく、ビジュアル的にも演奏の背景に広がる港の夜景は演奏会場をいよいよ幻想的なものにしてくれるのだ。

これは大袈裟ではなく演奏が始まるとすぐ「やっぱりね」と誰もが自然に頷いてしまうほどハッキリしている。では何故これほどここでの演奏は美しく響くのか、その秘密を私は知っている。というのも私の個展の折り漆喰のぬられた、かまぼこ型の天井が音響に大変良い効果があることを知っていたからだ。さらに氏はこの響きについて大変強いこだわりがあるアーティストだということも感じている。それは演目の中にあったモンスーンと言う現代曲に強く感じている。この曲による旋律を飛び越えた表現は、ギターの響きそのものにスポットが当たっているように感じるからだ。その響きはまるで鉱物の結晶のようにも感じている、その輝きは様々な色彩を帯びていて、私はこのようなアコースティック表現はそう簡単に手に入れることは出来ないだろうと思っていた。

というのも、そのことを裏付けるように聴衆は、演奏の響きが消え入るまで沈黙が続き、夢中でギターの響きを追いかけているようでもあり、その響きがすっかり消え入るとようやく周りから大きな拍手が起こっていたからだ。私は氏がこれほど微かな響きまで注目させる様子を演奏中何度もギターを揺りながら音の響きをコントロールする様子に感じていた。この様子を見て私は、昔見たデパートの実演販売を思い出していた。そこでは販売員が急須を揺すりながら煎茶の最後の一滴まで大切に注ぎながら、自然とそこに観衆の注目が集まっていく。その販売員によると急須からお茶を入れ終わる最後の最後に、お茶が翡翠の玉となって現れるのだという。果たしていよいよ急須の注ぎ口から最後の一滴がしたたり落ちると、確かにその雫はすでに注がれたお茶の表面をまるで翡翠色の玉のように転がりだしていく。その様子を見て、その場にいた観客から「おー」という感嘆の声が上がってくるのだが、私にはその様子が、ギターの響きが消え入るまで聞き入っていた観衆の様子と重なってくるのだ。

そんな演奏会場ではこのコンサートで演奏された曲目を収めたCDが販売されていた。私は当然のようにそのCDを購入したが、やはりその再生はなかなか容易ではない。それほど音の再生には魔物が済んでいて、それはまるでゴールの見えない夢の世界をさまよう旅人のようだ。きっとこれを満足させてくれるオーディオとは相当なレベルの機器になるに違いない。そしてまた夢のゴールポストはさらに動いてしまったようだ。

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Posted by makotoazuma