令和 あくび指南
2024年 10月22日 親しみの巨星
先日西田敏行氏が亡くなられた。今振り返ってみても氏の活躍された時代は、ほぼ私の半生とも言えるほど重なっている。なので追悼の思いもひとしおなのだが、だからと言って氏の活躍はあまりにも多義に渡り正直どこから手を付けていいものかと考えてしまう。とはいえ私が初めて氏の活躍を目にしたのは西遊記と言うテレビドラマだった。主演の堺正章氏はすでにバラエティーの寵児で沙悟浄の岸部シロー氏やヒロイン夏目雅子氏の美しさはいまだに脳裏から離れることはない。そしてゴダイゴの歌うこの番組の主題歌モンキーマジックはエンディング曲も含め当時の歌謡界に大きな足跡を残しているのだ。つまりこれほどの才能に囲まれたテレビドラマで初めてお目見えの役者がいきなり頭角を現すことは脅威と言うほかない、それほど氏の演じた猪八戒は個性的で魅力的だった。
氏はこれ以降も留まることの無い躍進を続けていた。例えば大河ドラマにおける氏のイメージはいまだに私の持つ偉人のイメージに重なっている。またそのイメージは偉人ばかりに留まらず、後の三谷幸喜氏の映画では落ち武者役と言う異界の存在を見事に演じられていた。映画と言えば思い浮かぶのはマエストロと言う指揮者の熱演がある。と言うのも西田氏は俳優としての才能ばかりでなく音楽家としてもレコード大賞受賞者という活躍をしている。最近も「さよならマエストロ」というテレビドラマに出演されていた時は、指揮棒を振る演出は無かったものの何気なく手を振る仕草から映画での熱演が蘇ってきたのである。
それほど才能に恵まれ活躍されてきた方にも関わらず氏から受ける私のイメージはいつでも穏やかで親しみ易さが溢れていた。いまでも金曜の深夜に放送されていた探偵ナイトスクープで番組の投稿に感極まり涙を流すシーンを思い出す。これほどメディアに偉大な足跡を残しながらも日頃のなにげない出来事に対し純粋な心を向けられる方だった。
ところでここでお別れを述べるのが常識的な追悼文になるなのだが、私が常日頃思うことは人間の意識は無くならないのである。要するに肉体的な死ではあったとしても一度刻まれた記憶は消えて無くなることがない。私の思う人生のイメージは、このように刻まれた記憶の上にまた別の意識がその記憶を共有していくというイメージなのだ。なので人生は一巻の終わりではなくこれを一巻の完成と認識している。
それにしても西田敏行氏の一巻には百科事典にも相当する大きさがある。