新 思考ラボ
2025年 1月28日 借金は誰の為
一般的に借金を負うといえば返済の辛さだけが際立ってしまう。とはいえ一方では借金により世の中に何らかの価値が生まれているはずなので、その価値が次の価値を生み出すことになれば、借金とは良くできた仕組みなのである。つまり何ら価値を生まないものへの借金は返済の辛さだけが社会に残るまさに悪そのものなのだ。
さてこれは一般人の借金に対するイメージなのだが、これが国という大きな括りになると受け取り方がずいぶん違ってくる。というのもいつの間にか借りた人と返済する人の仕切りが分からなくなるからだ。例えば日本は今1100兆円もの世界に稀な国債残高を抱えている。このままでは債務超過に至る可能性があるのではという雑誌の見出しが目に付いた。記事を読んでみるといろいろ予防線が貼られていたので、過激なタイトルはどうやら釣りのようである。
ところで国の借金といえば以前政府のTVCMでも、ただいま国民一人当たり何百万円の借金という強迫めいたCMが流されていた。これを見て4人家族では1000万円を超える額になり、このCMを見るたびに絶望感に襲われた。とはいえ国民はいつのまにそんな借用書を書いてしまったのかといえば、これを書いたのは結局、予算編成に携わった国会議員に他ならない。もっと言えば時の政府なのである、つまり公約にないことを国会議員が勝手に進めることは、勝手な借金を作りその返済を国民に迫るようなものである。だとすれば国民はその借金で世間がどんな利益を得たのかぐらいは知っておく必要がある。つまり我々国民の関心は予算編成だけに偏っていないだろうか。これでは、無駄な予算を次々増やされても国民は何ら反論することが出来ないのではないだろうか。
因みに今回1兆2千億を超えるGX予算が組まれているが、この中身を見れば発電事業の内訳は相変わらずの太陽光、風力が中心でこの分野に携わる日本企業がほとんど無いにもかかわらず、何ら顧みられることがない。つまりこのままでは、機材の発注は中国企業の独壇場となる。これほど厳しい環境に陥っている日本の自動車企業を目の前にしていながら政府は、税金による補助金を使って不利な販売競争にさらそうとしている。しかもこのような暴挙は国内企業ばかりでなく同盟国であるアメリカに対しても、共に手を携えるどころか真逆の行動に及ぼうとしている。というのも確かトランプ政権では、このようなSDGSの流れに反対しパリ協定脱退の意向を示していたはずだ。
とはいえ政府が提出した防衛予算を見れば、アメリカ軍に対する予算は基地対策として7500億円、これにF35戦闘機の購入費を足せば1兆円に迫る予算なのである。因みに同時に購入される国産のF2支援戦闘機はこの10分のⅠのコストで同じ機数を購入することになる。要するに経済では中国に花を持たせ、軍事的にはアメリカ軍に従う姿勢を見せているが、兵器のやり取りというのは人の命が強く関わることだけに国としての考えを明確にしなければ良い同盟関係にはならないだろう。現在の世界情勢ではこのような繊細な配慮が相手国へのメッセージとなり信頼関係に繋がる。ようするに税金で国民を危険な賭けにさらすのはやめて欲しいのだ。
結局、政府の借金によって国民生活が豊かになれば、借金は新たな付加価値の創造になり、いずれその結果は国民に還元されることになるだろう。ところが逆に政治家の私利私欲を満たすための借金だったとすれば国民の立つ瀬がないのだ。
つまり国債について返済の負担があっても、経済が国内で安定的に循環していれば何ら問題になることはない。このことは単に新たな工業製品を生み出せと言うのではなく、国防や警察消防が安心して機能できる社会になればそこに活発な経済活動や地域に対する投資が集まるからだ。
因みに国債発行でハイパーインフレが発生し国が破綻するような事態は有り得るだろうか。この場合日本国内で国債の取引が完結している場合は、そのような心配は必要ないだろう、もしあり得るとすれば、外貨や他国の資金が入った場合はその危険性は否めない。以前外貨建ての国債を発行しようとしたとんでもない総理大臣がいたが、こんなことをすれば大量の国債残高は致命傷になりかねない。
つまり国債発行が財政を逼迫させるのではなく、理不尽な政治家が国を疲弊させてしまうのである。ついでに言えばこの記事では、日銀の今回の利上げを何とか正当化したいという思惑が認められるのだが、納得のいく内容ではなかった。
今回は短期金利の利上げではあるが、計算上は長期金利に影響することは避けられない。その結果国債費を膨らませることになり、結局他の予算を圧迫することになる。つまり利上げはどう考えても国民サービスの低下に繋がる、だとすれば利上げは誰のためというのが国民の思いだろう。