日々これ切実
2025年 11月12日 すべては記憶の彼方へ
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ウェキペディアより
昨日仲代達矢氏の訃報が流れた、私は氏の功績について語れるような立場にないが、氏が活躍されていた時代を振り返ることはできるだろう。先ほどウェキペディアを覗いて自分の記憶と突き合わせてみたが、あまりの情報量の多さに愕然としてしまう。とはいえ私がいまでも頭から離れないイメージは、大河ドラマの新平家物語で平清盛を演じられていた時のイメージだ。このドラマいつの放送かと思えば1972年で私が小学校の頃の記憶が未だ消えない。今思い出すとその清盛は才気に満ち、時に覗かせる冷酷そうな表情に何とも底知れない恐ろしさを感じていた。
最近では鎌倉殿の13人における松平健氏の名演も印象深かっかったが、何故か私は50年も前に視たTVドラマの印象から離れられない。結局、私は氏の舞台を拝見することは出来なかったので氏の活躍は、テレビドラマか映画で拝見するしかなかった。中でも映画での活躍は特に印象深い。そして日本映画といえば、黒澤映画での活躍が忘れられない。例えば、椿三十郎、天国と地獄では当時から世界的スターだった三船敏郎氏に負けない存在感を見せつけていた。そして黒沢映画が世界的リスペクトを受け誕生した影武者は、コッポラ、ルーカス共同のプロデュースによって誕生した映画だった。氏はこの映画に武田信玄として主演し世界中で認められることになった。その映画はまさにハリウッド映画と言える日本版大スペクタクル映画で壮大な戦国絵巻さながらの作品となった。また1985年公開の映画「乱」は日仏の合作映画として制作され日本映画史に新しい風を吹き込んだ。この映画で特に興味深いところは、ストーリー展開がシェークスピアのリア王を思わせ、この役作りには内省的な心理描写が求められる演出だった。つまりこの作品は仲代達矢氏の舞台俳優としての表現力なしには完成し得ない作品だっただろう。また衣装デザインにはワダエミ氏が起用され、その巧みな色彩感覚から絵画的な映像美が印象に残る作品となった。つまり役者は、動的な立ち回りによる役作りよりも、役者の静的な存在感そのものが求められていたに違いない。
それにしても、結局のところすべては記憶の彼方に消えてしまうものかもしれないが、私のような細やかな人生に氏の活躍された時代のイメージが重なっていることは大変な誇りに感じている。氏の活躍は日本の芸能文化史における誇りそのものだと思う。