今日は好日
2021年 12月17日 掛け取りって何
掛け取りとは、借金取りのことです。最近はほとんど見なくなりましたが、その昔の買い物はつけで行われることが多くありました。つまり、お店屋さんに行ってもお金を払わず、月末にまとめて支払うことが良くありました。信用取引の走りのようなものです。そこで、商売をする人は月末になるとその回収に歩きます。ところがその回収も容易でないことの方が多かったようです。月末に回収できなければ、年の暮に何とか返済を済ませてもらおうと強めに返済を求めてきます。この様子を落語にしたのが「掛け取り風景」という落語です。
ところがこの落語、ちょっと話すには難しいところがあります。粗筋は年の暮、八五郎のところへ支払いの催促に借金取りが次から次押しかけます。借家の店賃から、酒屋まで来るのですが、八つあんには返済のめどが有りません。そこで、借金取りの趣味に合わせて上手く返済を待ってもらおうという算段をします。家主が取り立てに来れば趣味の狂歌で、酒屋が来れば歌舞伎の役になり切り返済を伸ばすように言いくるめます。
ということは義太夫や歌舞伎のセリフが出来なければ話が盛り上がりません。この噺はあたかも目の前で歌舞伎が演じられているようにできてこその演目です。
今日のお話は落語協会会長の柳亭市場師匠です。やはり落語研究会からの演目で、まえに市場師匠の七段目を聞いてすごい噺家さんだと思っていましたが、今日聞いた掛け取りも素晴らしく良かったですね。私は普段から歌舞伎を見て楽しめる素養はないのですが、噺家さんの演じる歌舞伎を見るととても面白そうに感じます。また、当時の庶民がどれほど芝居を愛し楽しんでいたのか、そして詩歌に素養があったのか、これは長屋暮らしの庶民の話です。