今日は好日Vol.2
2023年 12月5日 研究会が笑った!
先日放送の落語研究会に桂二葉氏が出演されていた。私は初めてだったので、めくり台に書かれた名前からは女性か男性かわからなかった。そのうち出囃子と共にひょろりとして特徴のある髪型の若者が高座に現れた。この髪型で頭に浮かぶのは山ちゃんしずちゃんの山ちゃんかバナナマンの日村か、あるいはアニメのおじゃる丸か、男性でないとすれば黒柳徹子のようだ。果たして甲高い話声の様子からどうやら女性の噺家さんだとわかった。それにしてもこの落語研究会は多くの噺家さんが笑わないお客さんだと前置きしながらおそるおそる枕に入るほど緊張が伝わる。ましてや初めての研究会で女性の噺家となればさぞや気後れのすることだろうと思いきや、すぐに会場から笑い声が聞こえてきた。これは常連の気遣いなのかと思いきやその笑いは最後の下げまで続いていた。
私は世の中に笑いがどれほど大切なものなのかと思うのと、誰でも簡単に出来るものではないと思っている。つまり人を笑わせることは天賦の才によるところが多いと思うのだ。結局この芸ばかりは血の汗流してつかみ取るようなものではないだろうし、あらかじめ決まったセオリーや先人の後をいくら必死で追いかけたとしても叶わない。何故なら瞬間的にその場の空気をつかんで、話をそこに合わせることが出来なければ、人を笑わせることは難しいのだ。ちなみにこの日の演目である天狗刺しとは鳥刺しという鳥を捕まえる職業をもじったものだ。この鳥刺しで世界一有名なのはモーツアルトの魔笛に登場するパパゲーノだろう、たいがい鳥のぬいぐるみを着て登場する不思議な役だが、昔は世界中で親しまれた職業らしい。ところでこの噺では鳥を取るのではなく、カラス天狗を捕まえて、天狗をすき焼きにしようという荒唐無稽な物語なのだ。そんなむちゃくちゃな離しに落語を研究してやろという更に無茶苦茶な人たちを引っ張り込んでしまうのだから、女性噺家として未来を嘱望されているのも無理はない。
さてこの日の放送でトリになった柳家権太楼氏は、この高座で闘病の為顔にむくみが出ていると仰っておられた。それが遠目で見ると小じわが消えて若々しく見えているのが皮肉だった。ところでこの日の演目は「2番煎じ」で、この噺もまた火とお酒が絡んでくる。前回の出演でもこれらが絡んでくると、見るほうも自ずと神がかりの名演を期待してしまう。とはいえ今回は病み上がりの体で是非体をいたわってほしいとも思うのだが、高座はやはり期待通りの名演だった。この噺しで私の記憶に残っているのは、2015年に放送された柳家喜多八氏の二番煎じだった。あの放送からすでに8年も経ってしまったが、今回の2番煎じもまた私の記憶に残り続ける名演になった。きっとイノシシは手に入らないので牛すきをつつく度に、この噺が私の頭に浮かんでいるはずだ。もちろんせんじ薬は欠かせない。