令和 あくび指南
2024年 5月30日 青春はイラストと共に
先週の日曜美術館で変容するイラストレーション 宇野亞喜良が放送された。番組の冒頭では寺山修司氏の俳句を元に即興でイラストが描かれていた。見ていると粗く削った鉛筆の先が迷うことなく、まるでイラストが初めから絵がそこに存在していたかのように、たんたんと描かれ、当然のように完成を迎えていた。番組では確か90歳を迎えると言っていたが、描かれた絵からは加齢や衰えなどというイメージを感じることはない、作品は以前のまま耽美で怪しげな魅力にあふれている。
そこえ以前仕事を共にした横尾忠則氏が登場した。以前同じ番組で寒山拾得をテーマにした展覧会の制作風景が紹介されていたが、氏の年齢も87歳と北斎に迫る勢いなのである。この二人が寺山修司氏の天井桟敷というアングラ劇団の仕事をされていたのは興味深い。とはいえこのような時代は、私にとっては諸先輩方のジェネレーションに当たるのだが、私が物心ついた時には、すっかりこのような若者文化が根付いていて、まだ幼い私にとっては彼らの文化は、さしずめ背伸びしながら覗く対象だった。というのも彼らの表現は小学生が公然と親しむ表現ではなく、どちらかといえば人目を忍んでこっそり眺める作品だった。
その点、今は亡くなられてしまったが、当時のイラスト界を代表する和田誠氏の作品は、どれほど賑やかな本屋の平台に並べられていたとしても、また家族で眺める洋画劇場のテーマを飾っていても、皆が安心して楽しむことが出来た。とはいえ一見おとなしいはずの和田氏の作品は未だに私の脳裏から離れない。つまり、それほど氏の作品は強靭な存在感を持っていたということだろう。
ところで私は、この番組の対談から何となく二人の巨匠が目指す、それぞれのイメージが湧いてきた。私はこのことを鏡を用いて例えてみるた。例えば宇野亞喜良氏の作品は鏡の中に自分の世界を表現するものであり、横尾忠則氏の作品は鏡を壊すところから始まるように感じている。最後に、番組のエンディングで二人が挑むように鯛焼きをぱくつく姿が映し出された。その姿に私は、闘志を燃やしながら制作に挑む彼らの姿を重ねていた。
彼らは、まだまだやる気なんだー