令和 あくび指南
2024年 7月16日 百聞は一見に如かず
昨日もオーディオMAROさんからのお誘いがあり、プロジェクターの発表会に出かけた。私の古い頭の中ではこのような高精細画像はテレビのハイビジョン放送というイメージがいまだに残っている。ところが、昨日であったこの機器はテレビではない。私の色眼鏡では、このようなプロジェクターを使う人というのは、よほどの映画マニアの方という印象が強い。とはいえ、あの当時流行ったプロジェクターによる映像の印象は明るさや、色彩の再現性からは所詮、家庭用のミニシアターというイメージしか持てなかった。
ところが、昨日体験した8kの映像は私の持つこのような過去のイメージを完全に塗り替えてしまったのだ。それほど昨日の体験は圧倒的なものだった。
何しろ3メートルほどもある大画面にどれほど顔を近づけても画像がぼけるようなことはなく、隅々見渡してもすべてにフォーカスが当たっているような映像はこれまで体験したことがなかった。これを画素数というもので表すと2kのフルハイビジョンが207万画素だとすると、8kはなんと3318万画素にもなるそうだ。ではこれほど高精細なテレビ放送が放送されているのかといえば放送には衛星通信の制限がネックとなり実際8kの情報が送られることはないそうだ。むしろユーチューブなどのストリーミング配信でその効果は生かされるのだという。
ところでこの技術が実際に活用されているところを上げれば、最近では美術館や博物館などの活躍が目覚ましい。というのも、たとえ実物を展示したにせよ、より細部を詳しく鑑賞してもらうためには、このような展示が求められているというのだ。
とはいえこのような細密な映像を映すには、それなりのカメラ機材が必要に思われるかもしれないが、このプロジェクターは、これまでのように、ただ情報を投影させるだけの機器ではなかった。じつはこのプロジェクターの凄いところは8k以外のデータも8k画像に書き換えてしまうところにある。たとえば、メーカーさんのプレゼンでは自撮りのjpgファイルをプロジェクターを通して映し出すだけで、なんとスクリーンには立派な8k画像が映し出されていた。
つまり、ソースには8kの情報が入っていなくても、このプロジェクターは8kとデータの隙間を勝手に計算して高精細画像にしてしまうらしいのだ。そしてさらに驚いたのは、ブルーレイに納まる映画をこのプロジェクターを通して映し出すだけで、往年のハリウッド映画が驚きの8k映像になってしまう。というのも当時のハリウッド映画はフィルムに35ミリではなく65ミリを採用していたのだという、つまりもともとのデータ量が日本映画のスタンダードより倍近くあることになる。そのため、昨日サンプルに使ったオードリーヘップバーンのマイフェアレディーでは、すべてがモノクロのドレスコードシーンでも、そこに現れたオードリーヘップバーンだけは浮き出るように感じるシーンがあった。何故かといえばオードリーの衣装だけ白の彩度が高く、微妙な絹の光沢がハッキリ輝いてたのだ。そんな映像を見ていると新作プロジェクターの発表会にもかかわらず、つい映画に引き込まれてしまったのだ。私がこの体験から感じたことは、これは家庭用機器の守備範囲を超える大変危険な装置だということだ。もしマニアの人がこれを体験してしまったら、きっと食指が動かないはずがないだろう。