彼岸旅行
角の中
私は、角がどんな状態になっても、外がのぞけるように、あちらこちらに覗き穴をあけていた。ついでにイトの分もあけたので、角の中は、さながら星空のように明かりが見えて、ちょうどプラネタリュームのようになった。
それから私は牛がいつ目覚めて歩きだしてもいいように身構えた。まず、両足をつぱって背中で自分の体を固定し。そしてイトには落ち着くまで、私の脇にしっかりとしがみ付くように言った。私は、右腕でイトの頭をかばう様にして、左腕は正面に突き出し、手のひらで角を抑えた。そのうち角の中には牛の体温が伝わって徐々に熱気が満ちて来た。そして角の中で牛の呼吸がハッキリと聞きとれるほどせわしくなりし、血管を脈打つ鼓動が高鳴ってくるのがわかった。
そろそろだと思た瞬間、牛の嘶きが聞こえたかと思うと角は斜めに大きく揺れだした。私は、体勢を崩し牛の頭のほうへ向かってずり落ち、脇に抱えていたイトの上に覆いかぶさるような体制になった。