令和 あくび指南
2024年 1月10日 時代は歴史に
年明け間もなく芸能人の方々の訃報が続いている。中村メイコさんに続き昨晩は八代亜紀さんの訃報が届いた。中村メイコさんといえばすぐに思い浮かんで来るのは何故か連想ゲームという昔あったNHKの番組だったが、そこでの活躍といえば紅組キャプテンとして出演されていたのは番組が始まった最初の一年間だけだった。人間の記憶は触れ合う時間の長さより出会った時のインパクトで決まるものらしい。
そして私にとっての八代亜紀さんのイメージは紅白のトリを務めるゴージャスなスターというイメージだった。昔の紅白は今よりも紅白歌合戦と言うだけあって歌を競うことを強調した番組構成だった。それはまるで相撲番付のように出番が決められ、その中で八代亜紀さんは五木ひろし氏と7回、北島三郎氏とは3回も対戦している。つまり紅組の堂々たる横綱を長年務めていたのだが、これに加えて美貌までとなれば、世間のやっかみも相当なもので、あの美貌は化粧の賜物だなどと吹聴するものも居たくらいだ。
では彼女の歌の魅力はどこにあるのか、確かに魅力的なハスキーボイスではあるが、これまでハスキーボイスの歌手が持つ裏寂しさと彼女の持つゴージャスな歌の世界は不思議なことにあまり重ならない。恐らく歌の個性よりも彼女自身の個性が上回っていたからではないのだろうか、それが証拠に彼女の創作意欲は歌以外の絵画の世界でも発揮されているからだ。とはいえ私との接点といえば、せいぜいテレビかカラオケぐらいなのだが、そんな飲み屋のカラオケで彼女の歌を選曲する人に下手な人はいなかった。特に舟歌などを選曲してくるような人は「もしかしてプロですか」と聞きたくなるほど歌が上手かった。
悲しい思いの歌い初め、移ろう世の中を感じて一句
「賑わいの 行き来の跡に 雪あらた」
そして追悼の一句
「あきすぎて 盃に冷たき 六花かな」
テレビでしか出会うことなのいスターだが、同じ時代を生きていると思えば心強いものだ。寂しいことだが、そのスターが時代を去って歴史の中に住むようになってしまった。